恋を失くした日。今、ふった。 これ以上続けていくのは無理だと思ったから。 やっぱり中学で付き合うなんてしょせん遊びなんだ。 今年は受験だし。 「無理だと思うんだ。別れよう。」 彼女は、困惑した表情で、うん、と一言。 それ以上、何も言わないんだ。 自分は校舎に向かって歩いていた。 ふと、振り向いてみると。 泣き崩れている、彼女がいた。 彼女が泣いているのはやっぱりそれだけ自分のことを 好いていてくれたからなのだろうか。 「ありがとう。」 と心の中で思いながらふたたび歩き始めた。 教室ではみんな受験に向けて、参考書とにらめっこしているわけもなく そんな危機感を感じさせぬほど遊びほうけていた。 自分もその中の一人だったが。 あいつは勉強しているのかなと思ってあいつの席を見ていたら ぼぉっと窓の外を眺めていた。 外には明るい小さなオレンジ色の花が舞っていた。 「林田。」 話しかけないと決めていたがやっぱり気になることは聞かないと。 向こうはすぐに返事を返してこないで驚いた表情をしていた。 「何?田村。」 こいつに苗字で呼ばれたことって無いな。 「お前、勉強しないのか?」 「高校に行く気はあまりないし、とりあえず受けて合格したら入るけどくらいな感じ。」 「どこ受けるんだよ?」 「西ヶ咲高校。」 「お前には妥当な選択っぽいな。」 「田村はどこ受けるの?」 「わからない。」 「行きたい高校ないのに勉強してるんだ~」 「行きたい高校あんのに勉強してないやつに言われたくないね。」 こいつ、前はこんな無気力じゃなかったのにな。 前? なんで俺たち付き合い始めたんだっけ。 確か、中三になって初めて教室に入ったとき。 一人でぼぉっと今さっきみたいに席についていて 誰だったか忘れたけど男子が 「なぁ、あいつちょっとかわいくない?」 そんな言葉を耳に入れてちらっと顔を見たら 清楚でなんだか寂しそうですべてを悟ったようなそんな顔をしていた。 話してみるとかなり嫌味なやつで罵られてばかりだった。 ある日の体育の授業で自分のあいつに対する見方が変わった。 みんなでその日はリレーをすることになった。 みんなはたかが遊びと思っていたがあいつは真剣な目つきをして まっすぐにゴールを見据えていた。 その走っている姿がかっこよくて。 かっこいい、本当にかっこいいと思ったんだ。 それからまもなく、あいつから言ってきたんだ。 「田村、好きな人いる?」 顔を真っ赤にしながら離しかけてきた。 「いるよ。」 このときもびっくりした表情をしていた。 「誰?田村が好きになる人って想像もつかないなぁ~」 「お前だよ。」 どちらから告白したのかもわからないような変な会話だった。 今、思い出すと本当になつかしくて、 「何、笑ってんの?」 「ちょっと思い出し笑いをね。」 知らないうちにふきだしていた。 ・・・それから数ヶ月たち。 入試、合格。 三年間勤め上げたこの中学校での生活に幕を閉じる卒業式。 放課後の校門では、涙、涙だった。 「林田。」 「何、田村。」 「合格おめでとう。」 「そっちこそ。」 「高校バラバラになったな。」 相手は無言だった。 「なぁ、俺たちもう一度やり直さないか?」 自分でも驚いた、今更こんな言葉がでてくるなんて。 「なんで、もっと早く言ってくれないのそれ。 っていうかそんなこと言うくらいなら最初から、ふらないでよ。 もう中学校も終わりで会えなくなるって言うのにひどいよ。」 泣いてるのに笑ってる。 「ごめん。でもやっぱ、オレ、お前、好きだ。」 「なにそれ!」 元気な声がはじける。 「・・・また、名前で呼んでもいい?」 「いいよ。ゆかり。」 「けんいち・・・。」 あのときのキンモクセイはもう無く、今はキレイな早咲きの桜が舞っていた。 fin ----------------------------------------------- あとがき。 タイトルはB'zの曲の「恋じゃなくなった日」をちょっと変えてみました。 実は・・・実話がちょこちょこ入ってるんですよー。 はははははー。 これ中1の時に書いたんだよなー。 その頃がイチバン小説書いてた時期だな。 この話、原文そっくりじゃなくてちょっと改変しました。 では、また次の作品でお会いしましょう。 ジャンル別一覧
人気のクチコミテーマ
|